農業IoT、"コウノトリ育む農法"にて省力化の実証へ

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」が製造や流通現場を軸に広がりつつある。それは社会インフラ、未来の自動車や住宅、医療、農業分野でもさまざまに活用が検討されていて、少子高齢化の時代をゆく日本では「超スマート社会(Society5.0)」の礎のひとつにならんとしている。

今日、兵庫県豊岡市とKDDIは、ICT(情報通信技術)等を活用して省力・高品質生産を実現する「豊岡市スマート農業プロジェクト」を開始。その第一弾としてIoTを用いた「コウノトリ育む農法」の水田管理省力化をめざす実証事業を始めると発表した。

一昨年9月に「地域活性化を目的とした包括協定」を締結し、ビッグデータによる観光活性化やネットショッピングサイトでの特産品販売を行ってきた。豊岡市は、コウノトリ但馬空港を擁することでも分かるように、特別天然記念"鳥"を野生復帰させた地元ぐるみで無農薬栽培の「コウノトリ育むお米」づくりに取り組んでいる。

とはいえその営みは容易ではない。田植えから中干しまで、雑草対策として通常よりも深く水を張り、農薬に代わる害虫を食べてくれるカエルやヤゴを増やすために長い期間水を張る必要がある。一般的な稲作よりも小まめな水管理を長期間行う、水田が広範囲に及ぶ大規模農家では見回りに半日かかることもあり、水管理の省力化が課題になっているという。

ゆえに今回、水田に通信システムにつながる水位センサーを設置――。農家はスマホなどで水位を確認でき、見回りの回数削減や時間短縮が図れる。異常値をメールで自動通知する仕組みを備えている、水位センサーは、セルラーLPWA (省電力広域通信技術) 規格である「LTE-M」に対応していて、ゲートウェイ (親機) 不要なうえに、電源確保の心配や電池交換の頻度を減らせるため、設置と運用のハードルが下げられる。

セルラーLPWAを利用した水田の水位監視は国内初の取り組みだという。