旅行体験ができる、遠隔操作ロボが量産へ

総合科学技術会議の「ロボット総合市場調査報告書」('07年)によれば、日本国内のロボットビジネス市場は2035年におよそ10兆円規模に膨らむと予測される。

同市場において、人の能力の拡張を軸としたサービスロボットの開発を推進し、通信とロボティクスの融合により、人間生活の飛躍的な向上、および各産業の高度化を主導していく明確なビジョンを共有している。KDDIと、同社がオープンイノベーションファンドを通じて出資しているTX Inc. は、テレイグジスタンス (R)技術等を活用して空間を超える遠隔操作ロボットの量産型プロトタイプ「MODEL H」を開発した。

テレイグジスタンス (遠隔存在) とは、人間を時空の制約から開放する概念。マスター・スレーブ型ロボットシステムの発展形式であり、ヒト型ロボットメカニズム、制御、視・聴・触覚センシング、人の運動計測、人への視・聴・触覚提示、データ伝送など、ロボット工学やVR、通信や認知心理学など多岐にわたる知識と技術とノウハウが基になっているという。

「MODEL H」は、使いやすさ、耐久性の向上、起動・使用開始時間の短縮、デザインの洗練、独自クラウドインフラ、移動体通信・インターネット対応が実現されている。コックピット側 (操作側) では、可搬型ケースに制御コンピュータ、赤外線3D位置測定、VRや触覚機器を内蔵し、大幅にコンパクト化したうえ、触覚提示デバイスのモジュール化およびUI/UXの向上がなされている。

一方、ロボット側では、低遅延な視聴触覚の伝送、量産を想定した機構設計と製品としての外装デザインの確立、ホイール移動による自在性、可搬重量の大幅な向上などが実現されているという。両社は今夏これを用いて、東急不動産、鹿島建設、CiP協議会とともに、返還50周年を迎える小笠原諸島でのテレイグジスタンス体験、ロボット旅行イベントの開催を検討している。