他人の動きを予測したときの

「上手くなりたければ一流のプレーを見ろ!」とコーチがいう。その効果は科学的にも証明されていて、自分の動作が無意識のうちに影響を受ける「運動伝染」を根拠にしている。スポーツ観戦中にアスリートと同じように体が動いたことはないだろうかと問われれば、多くの人がうなずくだろう。

過去の研究では、ただ他者の動作を見るだけで、その動作をまねしやすくなるという報告が成されている。一方、日常生活やスポーツ場面に目を向けると、我々は他者を単に見ているだけではなく、ほとんどの場合、次の動きを予測しながら他者を見ている。そして、実際に観察した動作が自分の予測と違っていることが多々ある。この違いを「予測誤差」という。現象について、運動伝染との相関を実地検証した――。

NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)、鹿屋体育大学、フランス国立科学研究センターは共同で、観察者が「予測誤差」によって自身の動作を無意識のうちに修正していることを明らかにした。他者の動作を見ている時に、予測誤差が生じる場合には自分の動作が他者の動作とは異なるように変化する現象を初めて確認したという。

今回の実験では、大学野球部員(被験者)30名にターゲット右上方向にばかり投げるピッチャーの映像を見てもらった。ただし映像の観察前、"予測誤差がある条件"のグループ10名に「ピッチャーは中心をねらっています」と伝え、"予測誤差がない条件"のグループ10名には、「ピッチャーは毎回様々な場所をねらっています」と伝えた。残りの10名はただ投げるだけの"コントロール"グループ。皆にターゲット中心をねらってボールを投げてもらった。

すると、"予測誤差がない条件"グループでは、投げたボールの位置がターゲット右上方向へずれていった。しかし"予測誤差がある条件"グループでは、上記位置が映像とは真逆の方向にずれていった。この結果により、予測誤差によって生じる新しい運動伝染の存在が示された。実験を通じて、"コントロール"グループが投げたボールの位置は中央付近から変化しなかったという。

この新しい運動伝染――被験者の動作が予測誤差を打ち消す方向に変化したことは、被験者の脳が、他者(ピッチャー)が修正すべき誤差をまるで自分の動作の誤差のように処理してしまっている可能性を示唆。運動伝染が自己の動作に与える影響は、他者の動作を模倣する方向の変化と、予測誤差を修正する方向の変化の、少なくとも2通り存在することが分かった。

他者の動作を見る時の予測誤差を操作することによって、観察者の動作を、知らず知らずのうちに異なる方向へ導けることが確認できた。研究手法の応用によって、動作を望ましい状態へと無意識のうちに変容させる、効率的な運動トレーニングシステムやリハビリ方法の開発が期待されるという。今回の研究成果は、神経科学の国際科学誌「eLife」電子版に掲載された。

「他者をどうみるか」が鍵!

カテゴリー: 情報通信   

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