北海道で水素サプライチェーンを構築する

「石油は地球の血液だ」と約30年前にネイティブアメリカンの部族長が言った。化石由来のエネルギーには限りがあり、大量に使えば環境破壊を招く。そこで近年、宇宙にも遍在し、持続的に供給でき、利用しても地球に重い負担をかけない水素が、エネルギー源として大いに注目されている。

日本においては、地球温暖化対策として環境省が「地域連携・低炭素水素技術実証事業」を進めている。そしてその取り組みの一環として「小水力由来の再エネ水素導入拡大と北海道の地域特性に適した水素活用モデルの構築実証」の準備を北海道釧路市・白糠町等で進めてきた。東芝エネルギーシステムズは岩谷産業とともに、この水素サプライチェーン実証にかかる全ての設備が完成し、きょうから本格運用を開始すると発表した。

同実証では、'19年度末まで、道・市・町と連携し、水素の製造から貯蔵・運搬・利用までの一貫した低炭素なサプライチェーンモデルを構築――白糠町の庶路ダムに建設した200kW小水力発電所からの電気を使い、1時間あたり最大約35Nm3の製造能力がある東芝エネルギーシステムズ製の水電解水素製造装置で水素を製造する。

製造した水素は岩谷産業が貯蔵・運搬し、釧路市内の福祉施設、白糠町内の酪農家および温水プールにある製燃料電池「H2Rex™」や、トヨタ自動車の士別試験場にて燃料電池自動車で利用する。小水力発電の電気を直接利用して水素を製造する実証事業は国内で初めてだという。

地域一体となった水素サプライチェーンを稼働させる今回の実証実験を通じて、東芝エネルギーシステムズは、熱利用の多い北海道での再生可能エネルギー導入拡大を図り、CO2排出量削減に貢献。一方、岩谷産業は産業用水素の輸送・貯蔵・供給システム関連技術、水素ステーションの建設・運営等の知見をもとに水素エネルギーの利活用拡大に向けて、積極的にその役割を果たしていく構えだ。