DNPとJTB、観光分野のパーソナルデータ利活用に向けた社会実装を実施

大日本印刷(DNP)とJTBは、総務省の「情報信託機能の社会実装に向けた調査研究」に参加し、2017年12月~2018年2月に「京都まちぐるみコンシェルジュサービス実証」を実施したことを発表した。

社会実装とは、調査研究の成果を社会課題の解決に応用、活用するというもので、今回の調査研究の結果、情報信託機能によって観光分野でパーソナルデータを安全・安心な環境下で高度に流通・利活用する際の方策や課題が把握できたとDNPは説明する。

サービスの実証では、モニター(情報提供者)が自らの意思で自分のデータを管理する「パーソナルデータストア(PDS)」と情報提供者の指示や事前に指定した条件に基づいて、本人に代わって妥当性を判断して第三者にデータを提供する「情報信託機能」に関する観光分野での調査として、情報提供者へのアンケートおよび有識者やサービス事業者へのヒアリングを実施した。個人情報の預託に関する受容性や課題、情報信託機能への満足度評価、サービスの使いやすさ、提供された個人情報を利用する事業者間の取引上の課題などについて検証した。

情報提供者は、観光分野のサービス事業者にパーソナルデータを提供し、その利活用を許容する度合いが高いことが分かった。例えば、自分の現状や過去の行動に合った"おすすめ観光情報"を受け取るためにパーソナルデータを提供する許容度は、日常生活時と比べ43.9%も高い結果となった。

パーソナルデータを預託しサービスを利用した人の今後の利用意向は81.8%と高く、観光は高度なパーソナルデータの流通・利活用に適した分野と考えられる。一方、旅行関連情報を提供するサービス事業者は、最適な情報を提供するため、旅行中の人々からのリアルタイムなパーソナルデータを求めている。今後は、サービス事業者間でのパーソナルデータの連動や循環も必要になると想定できる。

PDSを利用したい情報提供者の80%が、情報信託機能の利用を求めていることが分かった。また社会実装に向けては、第三者に提供したパーソナルデータが意図しない形で流通しないよう管理する機能や、流通したパーソナルデータを追跡できるトレーサビリティ機能について、80%以上の情報提供者が重要だと考えていることが明らかになった。サービス事業者および関係者は、パーソナルデータの提供にともなう損害やコスト負担、クレームの受付窓口など、各種データやサービス連携時の責任分担などを明確化する必要があり、様々な観点からの検討が問われている。

ポイント付与など具体的な利便性の提示によって、人々の情報信託機能の利用意向が高くなった。例えば、匿名化された個人情報を企業が統計分析に利用する見返りにポイントが付与されるサービスでは、利便性を提示しない場合と比べて47.5%高い、84.1%の人々が利用したいと回答。

また、情報セキュリティやプライバシーの確保に関する説明に加えて、サービスプラットフォームとしての具体的なメリットを訴求することが重要だと考えられる。サービス事業者にとっても、データ利活用のイメージや自社メリットの理解を高めていくことが重要となってくるという。

DNPとJTBは、観光分野における情報信託機能の利活用を推進し、地域の観光関連のステークホルダーと連携しながら、人口減少時代の新しい旅行体験の創造と観光地の課題解決を目指していく。