運動エネルギー(J)=1/2×質量(kg)×速度(m/秒)の2乗。重さに比例し、速さが倍になれば4倍になるエネルギーは動く物すべてに、常に働いていて、衝突停止すればそれが即座に破壊力になる。だから自動車の事故は、高速道路や大型車両において深刻となる。
運動エネルギーや慣性モーメントを意識していても、突発的な病気や体調不良により、ドライバーは車両を制御できなくなることがある。そのため、平成28年1月に発生したスキーバス事故を契機に、「貸切バスのASV技術搭載状況に関する車体表示ガイドライン」が定められた。ASVとは、衝突被害軽減ブレーキなど先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した、先進安全自動車のことだ。
そして、大型車におけるASV技術に取り組む日野自動車はきょう、ドライバーの急病等の異常発生時の車両停止を支援する「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」を開発――これを今夏、大型観光バス「日野セレガ」に標準装備し、商用車として世界で初めて商品化する予定だと発表した。
ドライバーの急病等に因る事故では、車両がコントロールを失ったまま走行を続け、反対車線への逸脱やガードレール等への衝突といった二次被害が発生する恐れがある。ゆえに一刻も早い停止が有効であり、ユーザーからも「万一の際に車両を緊急停止させる機能がほしい」との声が多く寄せられていて、今回実用化に至ったという。
EDSS搭載車は、ドライバー自身や添乗員が運転席の非常ブレーキスイッチを押すか、乗客が客席上部のスイッチを押すことで制動を開始し、徐々に速度を落として停止する。このとき、車内では非常ブザーが鳴るとともに、スイッチに内蔵されたランプが点灯、赤色フラッシャーが点滅して、緊急停止することを乗客に伝達する。さらに周囲に対しては、ホーンを鳴らし、ストップランプとハザードランプを点滅させ異常を知らせる。