情報通信
5Gの次世代を実現する革新的無線通信技術を開拓
日本電信電話(NTT)は、2030年代の無線需要を支えるテラビット級無線伝送の実現を目指し、OAM多重という新原理を用いて毎秒100ギガビットの無線伝送に世界で初めて成功したと発表した。
OAMとは、電波の進行方向の垂直平面上で位相が回転するように表される電波の性質の一つで、この位相の回転数を「OAMモード」と呼ぶ。OAMの性質を持つ電波は、同一位相の軌跡が進行方向に対して螺旋形状になる。また、OAMの性質を持つ電波は、送信時と同じ位相の回転数を持った受信機でないと受信できない。
そこで、異なるOAMモードを持つ複数の電波を重ね合わせても、それぞれのOAMモードに合った位相の回転数で受信できる受信機を用意すれば、互いに干渉することなく分離する。この特徴を利用し、複数の異なるデータを伝送する技術を「OAM多重伝送技術」と呼ぶ。
NTTは、OAM多重伝送に、現在広く利用されている「MIMO」技術を統合したOAM-MIMO多重伝送技術を考案。MIMO技術を巧みに統合することによって、異なるOAMモード間で互いに干渉しない性質を維持しつつ、複数セットのOAM多重伝送を同時に行うことが可能となり、従来を凌駕する多重伝送を実現できる。
この技術を用いた無線伝送を行える28GHz帯で動作する送受信装置を試作し、実験室において10メートルの距離で伝送実験を実施した。OAM多重される複数の電波にデータ信号を乗せ、原理通り無線伝送が可能であることを確認。さらに、7.2から10.8Gbps のデータ信号11本を同時に処理できる信号処理技術を実現し、合計100Gbpsの大容量無線伝送に世界で初めて成功したという。
2030年代に向けてIoTの本格化があらゆる分野で進み、無線伝送の大容量化への要求は引き続き高まっている。NTTでは、今回の成果を踏まえ、さらなる空間多重数の増加、伝送帯域幅の拡大を実現する研究開発に取り組んでいく考え。