スーパーエンプラを用いた医療デバイス、日本発アジア展開に向けて

デジタル技術を活用する「第4次産業革命」は、あらゆるモノがネットにつながるしくみ(IoT)や人工知能(AI)の文脈でほとんどが説明されている。だが、もの作りの現場ではそれらに勝るとも劣らず、3Dプリンターとこれに用いる熱可塑性樹脂が注目されている。

連続使用温度(耐熱性)が高く、耐薬品性、耐熱水性、物理および電気特性にも優れているそれは「ハイパフォーマンスポリマー」とか「スーパーエンプラ」と呼ばれ、自動車、電子・電気部品、航空宇宙や医療分野で活用が進んでいる。3Dプリンティング技術の登場によって需要が拡大中である。

スーパーエンプラのひとつ、ポリエーテルケトンケトン樹脂(PEKK)について、JSRは、この素材を用いた医療・工業用途向け高機能デバイスメーカーの米OPM社と、アジア地域におけるPEKK医療デバイスおよび歯科中間材料事業パートナーシップで合意した。

ライフサイエンス領域での新たな価値創造活動の一環として、「材料技術とデジタル技術との融合」を通じた研究開発とその社会実装をJSR・慶應義塾大学 医学化学イノベーションセンター(JKiC)にて進めている。この医療イノベーションへ向けた取り組みの早期具現化を図るJSRと、保有事業のアジア地域への拡大をめざすOPMの方針が一致し、今回の合意に至った――。

OPMはこれまで、生体骨組織との親和性に優れるPEKK、3Dプリンティング技術を用いた医療分野向け高機能デバイスを開発してきた。自社で米国FDAを取得した個別化頭蓋骨再建デバイスの他、脊椎ケージや歯科補綴材など医療デバイスが'13年以降多くの臨床現場で使用されているという。

JSRとOPMは、上記事業を手がける製造販売会社を年内に日本国内に設立し、来春までに事業運営を開始する予定であり、JSRはこの協業を通じて材料技術の強みを生かした医療デバイスの実用化をさらに加速させていく構えだ。