AIシミュレーションにより希少な不具合をも発見する

工場の機械化、製品の大量生産、ラインの自動化(FA)に次ぐ、「第4次産業革命」はいま世界各国で進展している。かつての変革は蒸気機関や電力、電子計算機によってもたらされたが、この度の変革の原動力はデータであり、IoTやAIだ。

施設や機器のセンサーなどからの大量データを分析あるいは解析し、生産効率や品質を飛躍させる。新たな仕組みにおいて、情報のフィードバックと模擬実験(シミュレーション)は設計および製造工程で重要な仕事となる。

現在、新製品の設計ではコンピュータによるシミュレーションで製品の模擬評価や検証を行っている。不具合検証では、熟練の専門家が様々な条件を想定してシミュレーションを繰り返しながらそれを探索するが、まれにしか起こらない不具合は発見に時間がかかる。また社会システムの高度化に伴いさらなる高信頼性が要求されるなか、設計対象が複雑になるため、まれな不具合が見落とされるリスクが増大するという。

NECと産総研は、発生確率が極めて低いため設計段階で事前に発見が難しい不具合を、AIが学習をしながらシミュレーションを繰り返して効率的に見つけ出す「希少事象発見技術」を開発した。これは最先端AI技術群NEC the WISEの1つだという。両者は'16年に人工知能連携研究室を設立以来、「未知の状況での意思決定」のための「シミュレーションとAIの融合技術」に取り組んでいる。

そして今回、同技術を光学機器の設計検証へ実際に適用したところ、、発生確率が1億分の1程度とまれであるものの、性能低下の原因となる「迷光」(想定外の位置や確度からの入射光や散乱/反射により発生する不必要な光)について、熟練専門家が1週間を要していた検証作業を約1日に大幅短縮し、複数の不具合を見落とさず発見できたという。

成果はデータマイニング分野の国際会議「SDM18」にて発表された。