地球環境に悪影響を及ぼす二酸化炭素等の排出量ゼロを目標にする。「ゼロエミッション」は日本発の構想であり、'94年に国連大学が提唱したことで世界に知られた。産業界で廃棄物を有効利用し、社会全体で資源を循環させる取り組みである。
いま、ゼロエミッション構想を地域の経済社会形成の基本として、環境調和型のまちづくりを推進する「エコタウン事業」の旗が振られている。日本全国には26のエコタウン計画承認地域があり、その先駆けとなったのが約2,800ヘクタールの臨海部全体を対象エリアとした「川崎エコタウン」だ。
環境先進都市をめざす同地域において、NECと川崎市は、中商、資源循環ネットワークと共同で、IoT(モノのインターネット)技術を活用した資源循環システム高度化の実現可能性を調査。産業廃棄物等収集運搬システムによる低炭素化への有効性を確認するとともに社会実装に向けた課題を抽出した。
環境省の平成28、29年度低炭素型廃棄物処理支援事業の採択を受けて実施された。同事業における産業廃棄物等収集運搬システムでは、市立病院の廃棄物ヤードにカメラなどセンサーを設置し、廃棄物の蓄積状況を把握――。病院周辺のクリニックも含めた適切な回収ルートを作成し、効果を検証した。結果、車両運行距離が約9.2%削減可能と評価され、その有効性が確認できた。
制度運用面、商慣習面、排出品目や排出場所等の特性を見据えた技術面の宿題など、社会実装に向けた課題の抽出も行えた。
NECは、基盤ソフトFIWAREによるスマートシティ向け「データ利活用基盤サービス」を自治体や開発事業者らに提供していて、今回のシステムでもこれを活用、今後は同システムのさらなる高度化を行い、低炭素化に向けた取り組み強化や事業化の検討を進める。
一方、川崎市は、「臨海部における高い企業集積と環境技術の集積」メリットを活かし、国内外の資源循環を促進していく構えだ。