舵取センシングとビッグデータにより省エネ運航、故障予知の実現へ

近ごろさまざまな分野でITを活用した良い方向への転換、デジタルトランスフォーメーションが進められている。大量のセンサー等からのデータをネット経由で集める「IoT」と、このしくみが生み出す「ビッグデータ」の解析は、旧来の常識や手法を変えて新しくする原動力になる。

それは地上に限らず、海のうえでも進められていて、「船舶維新NEXT~MOL SMART SHIP PROJECT~」のもと高度な輸送技術を追求している商船三井と、多彩な事業分野でテクノロジーの頂点を目指し独自性・革新性を追求している川崎重工はきょう、「舵取機の新たなセンシングとビッグデータ解析による省エネ運航・故障予知技術」の共同開発に合意したと発表。

この共同開発プロジェクトでは、舵取機に油圧の圧力や流量、作動油の温度や消費電力などを監視するセンサーを取り付けるとともに、船内に大容量ストレージを備えた高速データ収集装置を搭載することで、舵取機の状態に関するデータを詳細に収集することが可能になる。蓄積された舵取機に関するビッグデータの解析により、各種パラメーターの異常を察知し、故障を予知することで船舶の信頼性向上につなげる。

と同時に、航海中の機関プラントの状態、船速や針路などの各種データと組み合わせて解析することで、状況に合わせた省エネ運航の実現を目指すという。センシング技術を搭載した舵取機と高速データ収集装置は、1916年の製造以来20,000隻超の多彩な船舶に舵取機を納入している川崎重工が建造中の、商船三井向けVLCC(大型原油タンカー竣工例)に実装する。

川崎重工は今回のテクノロジーについて、船舶の信頼性や操船性の向上、および省エネ運航に貢献する将来的な「インテリジェンス機能搭載型舵取機」の開発に向けた重要なステップと位置付けて検証を行い、2020年度中の開発完了を目標にしている。