国内LOB部門のIT支出が増加傾向に、IDC調査

IDC Japanは、国内IT支出を、支出元がIT部門(IT Funded)であるか、事業/業務部門(Business Funded)であるか、という観点で調査を行いその結果を発表した。

調査では事業/業務部門(Line of Business:以下、LOB部門)によるIT支出動向を、17の産業分野別と4つの従業員規模別、さらに研究開発やマーケティングなど12の職務機能別に分析した。

2018年は、国内IT市場におけるLOB部門による支出(Business Funded)が全体の39.9%、4兆8,793億円で、IT部門による支出(IT Funded)が60.1%、7兆3,463億円とみている。また、それぞれの2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は4.0%(Business Funded)、1.5%(IT Funded)と予測する。

LOB部門におけるIT投資が積極的に行われることが見込まれる産業分野は、銀行、保険、組立製造、プロセス製造、運輸、公共/公益、建設/土木分野。金融機関の業務効率化を目的にRPA(Robotic Process Automation)の本格的な活用が開始されていることや、FinTechサービスの本格展開、電力およびガスの小売り自由化を受けた顧客向けサービスの拡充にITを活用する動きが背景にある。

製造、建設/土木分野における研究開発部門のほか、生産部門や建設/土木部門など特定の産業に特化した部門でIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やコグニティブ/AI(Artificial Intelligence:人工知能)システム、ドローンも含めたロボティクス、ビッグデータ/アナリティクス、モビリティ、クラウドなどの第3のプラットフォームの活用が、LOB部門主導あるいはIT部門も関わる協働プロジェクトとして進められるためと分析。

また、企業規模が大きくなるにつれ、LOB支出の成長率が徐々に高まる傾向にあり、大企業のCAGRは5.1%と高い成長率を予測している。これは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが大企業を中心に進められていることも背景にあるとみている。

DX推進に関するユーザー調査において、自社のデジタル戦略やDXを推進するのは自身の所属部署であるとの回答が最も多かったのがIT部門であり、ITを活用した変革への意識が高いことがうかがえるという。

また、「他の部門と共に、自分の部門が推進役を担う」との回答率が最も高かったのが、研究開発部門と管理部門であり、3割前後の回答者が他部門と共に推進役を担うとの意識を持つ結果となった。

研究開発部門においては、新たな製品、サービスやビジネスモデルを開発し、展開することを狙う変革の取り組みが考えられ、一方、人事部門やセキュリティ/リスク管理が含まれる管理部門では、組織の体制強化の領域での取り組みが挙げられる。

IDC Japan ITスペンディング シニアマーケットアナリストである岩本 直子氏は「ITサプライヤーは、事業部や業務部門の現場のIT活用レベルを見極め、DXのゴール設定やKPI(Key Performance Indicator)の議論などを共に進める共創のアプローチを推進すべきである。これによって、LOB部門における変革の意識が醸成され、全社的なDXの推進を加速させることができる」と述べている。