脳科学研究における深部観察を最適化できる顕微鏡を開発

理化学研究所(理研)は、「多光子励起レーザー走査型顕微鏡」専用の自動球面収差補正システムを共同開発したと発表した。理研の産業界との連携センター制度(バトンゾーン制度)を活用した事例となる。

レーザー走査型顕微鏡とは、標本上の一点に集光したレーザーを2次元に走査することで画像を取得する顕微鏡のこと。蛍光は、通常一つの光子が蛍光物質に吸収されて蛍光を発する1光子励起蛍光であるが、光子の密度を極めて高くすると、2つ以上の光子が同時に蛍光物質に吸収されて蛍光を発する「多光子励起蛍光」を起こすことができる。多光子励起レーザー走査型顕微鏡は、この多光子励起を利用している。

生体組織などの屈折率が高く厚みのある標本を、光学顕微鏡を用いて観察する際、対物レンズから出射された光は焦点面にずれを生じ、観察像が不鮮明なることが知られている(球面収差)。球面収差は、観察位置が深くなるにつれて増大するため、深部観察を行う場合には無視できない現象であり、解決すべき課題となっている。

今回、研究グループはこれらの課題を解決するために、「自動球面収差補正システム(Deep-C)」を開発した。Deep-Cをマウス生体脳イメージングに適用した結果、特に大脳皮質深部において、光学的収差の少ないより鮮明な画像が得られることを見いだした。Deep-Cを搭載したTruResolution対物レンズ(オリンパス)は、2018年1月より実用化している。

理研 脳神経科学研究センター理研CBS-オリンパス連携センター(理研BOCC)の宮脇敦史連携センター長と上喜裕テクニカルスタッフⅠ、脳神経科学研究センターの毛内拡客員研究員らの研究グループらが開発。

研究成果は今後、学習や記憶の神経基盤と考えられている神経棘突起の形態変化のより精密な計測などへの応用が期待できる。研究成果は、国際科学雑誌『Biochemical and Biophysical Research Communications』に掲載された。