半導体デバイス中の廃熱を電気信号に再利用

京都大学は、電子のスピン機能を用いて、シリコン半導体デバイス中で発生する廃熱を電気信号として再利用することに世界で初めて成功したと発表した。

白石誠司 工学研究科教授、安藤裕一郎 同特定准教授、山下尚人 修士課程学生(論文投稿当時)、小池勇人 TDK株式会社テーマリーダー、鈴木義茂 大阪大学教授らの共同研究グループが成功。研究成果は、国際学術誌『Physical Review Applied』に掲載された。

現在のCMOS(シーモス:相補型金属酸化膜半導体)トランジスタは、微細化の限界や膨大な発熱・廃熱による技術的限界に直面しつつある。これらの限界を突破すると期待される新機能デバイスの1つに「スピンMOSトランジスタ」がある。

研究グループは、2014年に世界に先駆けてシリコンを用いた同デバイスの室温動作に成功している。今回、このシリコンスピンMOSトランジスタを用いて、デバイス中で発生する熱を、電子の持つスピン機能を用いる新しい手法で再利用することができた。

研究グループによると、半導体デバイスで問題となる発熱・廃熱問題を解決するための新しいテクノロジーの創出を意味し、基礎学理・産業応用の両面で極めて重要な成果だという。

また、将来的に研究を進めることでさらに効率的に熱を電気信号に変換し、新しい情報処理システムへの応用に展開できると説明する。