新しい"がん免疫逃避"のしくみが明らかに!

悪性腫瘍(がん)は、その細胞が自律的に増殖を続ける。体のあちこちに転移し新たながん組織をつくり、正常な細胞が摂るべき栄養を奪い取る。がんのなかでも卵巣がんは、その多くが進行中に診られ、治療後再発も多い難治性の病気だという。

近年、がん細胞がさまざまな方法で免疫細胞の攻撃を逃れながら増殖する「がん免疫逃避」と呼ばれるしくみが分かってきた。婦人科がんの中で最も難治性の病気である卵巣がんについて、現状の治療法だけでは効果が十分ではないため、より有効な治療法の開発が強く望まれているという。

みなが婦人科腫瘍専門医で、日常、京都大学医学部附属病院で診療をしている研究グループは、卵巣がんの免疫逃避のしくみを解明し上皮間葉移行(EMT)関連遺伝子であるSnailと免疫との関係に着目し、新しい「がん免疫逃避」のしくみを初めて明らかにした。卵巣がんが分泌するケモカインと受容体との結合を阻害する薬剤が、卵巣がんの新規免疫治療として有望である可能性も示した。

SnailはEMTを引き起こしてがんの転移などを促進すると考えられてきた。が、EMT関連遺伝子群が高レベルで発現しているタイプの卵巣がんの予後は特に不良であることから、その免疫への影響を調べた。同研究グループは卵巣がんがSnailの発現を通して腫瘍内に骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)を誘導し、抗腫瘍免疫を抑えているしくみを明らかにした。

患者の血液からがん免疫逃避の状態や予後を推測でき、そのマーカーとしてCXCL1、CXCL2が有望。かつCXCL1、CXCL2とCXCR2の結合を阻害する薬剤が新規免疫治療として見込まれる。CXCR阻害薬は、気管支喘息や慢性肺疾患の治療薬として開発が進められていて、今回、卵巣がん治療での有効性が示唆され、臨床への応用が強く期待されるという。

研究成果は「Nature Communications」電子版に掲載された。