世界初! 再生可能エネルギーの普及を見据えた原理を明らかに

現代社会および産業に不可欠となっている、電力の安定供給において、発電機群の回転子の位相角が揃う「同期現象」の解析はとても重要である。

複数の発電機のうちの一つでも同期しなくなると、その発電機や周辺の発電機は安定稼働しなくなり、最悪のケースでは停電を招く。

特に今後、気象条件に発電量が左右される太陽光など再生可能エネルギーの普及。これを見据える日本では、効率的な発電・送電に関わる同期現象の解析の必要性はいっそう高まるだろう。しかし発電機群の同期現象の解析は従来、数値シミュレーションに基づくアプローチが主流であった。どのような送電ネットワークを構築すれば発電機群が適切に同期するか、その原理は理論的に解き明かされていなかったという。

JSTと東京工業大学は、同大学とノースカロライナ州立大学の共同研究グループが、電力ネットワークのモデリング・解析・制御に関する一連の研究成果をグラフ理論で検討し、ネットワーク結合された発電機群の同期を実現するための基本原理を明らかにした。この原理に基づき、送電網で複雑に結合された発電機群の振る舞い(回転子の位相角や連結点の電圧値など)を効率的に解析・制御できる電力ネットワーク集約モデルの構築手法を世界に先駆けて開発したと発表。

微分方程式モデル(Kron縮約モデル)にてオームの法則やキルヒホッフの法則などの物理法則を反映してしまっていた従来手法に対して、同研究グループは、数学的にも物理的にも妥当な集約モデルを構築。グラフ理論に基づき、代数方程式を消去しないで、送電網の連結点の電圧の同期にも着目して発電機の振る舞いを解析した結果、送電網の対称性が発電機群の同期を実現することを突き止めた。

再生可能エネルギーの大量導入にも耐えうる電力網設計への発展に期待される。今回の研究成果は、米国学会誌「Proceedings of the IEEE」オンライン版に掲載された。