スマホや産業機器だけでなく家や車、医療機器、牧場や圃場まで、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」時代がやってきた。いま日本では、人生100年時代と言われる長寿社会を迎え、健康志向の高まりによる漢方薬や健康食品への需要が増えている。
需要増大を背景に、その安全安心かつ安定的な供給が望まれている。他方、地域経済を支える重要な産業である農業では、新たな栽培品目の生産が求められている。が、漢方薬や健康食品などの原料となる薬用植物・機能性植物は、海外における野生品の採取に依存したり、伝統的な方法で栽培されたりしてきたため、新たに国内農家等が栽培するためには多くの課題があり、種苗の確保や栽培技術の確立などが必要だという。
富士通は、国立千葉大学と共同で、現在輸入に頼っている薬用植物・機能性植物を、国内で効率的かつ安定的に供給できる栽培技術の確立を目指し、生育状況と栽培環境との関連性を可視化し、生育に重要となる要素を分析する実証研究を今日から来年3月31日まで行う。耕作放棄地や休耕田の活用も視野に入れている。
今回の実証研究では、千葉大学および奈良県と大分県の協力農家が、薬用植物・機能性植物の栽培時に、スマートフォンで音声入力した生育状況の計測結果を自然言語解析AI(人工知能)で該当するデータ項目に自動分類すると共に、フィールドセンサーで収集した地温や気象データなどの環境データとの関連性を可視化する。
そのデータをもとに千葉大学が、生育に重要となる要素を分析した上で協力農家に適切な栽培アドバイスを行い、富士通が構築する栽培データ記録システムに、協力農家の栽培結果を千葉大学の知見と合わせて蓄積するという。
知と知をつなぐことで新たな力を生み出す「Knowledge Integration」にもとづき、同社は今回のシステムの機能拡充を図りながら、ソリューションやサービスなどの商品化をめざす構えだ。