尿でがん検査、初の実証実験はじまる

日本人の死亡原因トップは男女ともに悪性新生物(がん)。それは40歳から89歳まで、5歳刻みの各世代において死因の第1位であるだけでなく、10~14歳でも1位であり、0歳児を除くそのほかの世代でも2位あるいは3位を占めている。

ショッキングな統計データを公表している厚生労働省は、平成19年から「がん対策推進基本計画」にて都道府県へも推進計画の基本を示している。そして今年3月に閣議決定された第3期計画では、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」全体目標のもと、がんの早期発見等のがん予防、がん医療の充実、がんとの共生といった各分野で施策を定め、がん対策を総合的かつ計画的に推進する。

検査・治療費用に間接費を含めると莫大な負担となる。疾病の早期発見治療につながる「がん検査」の受診率向上のためには、診断法の高精度化だけでなく、がんを早期に発見できる簡便かつ高精度の新しい検査法が求められているという。日立製作所は、尿検体を用いたがん検査の実用化に向けた、体外診断分野では初となる実証試験を今月より開始する。

日立の実証試験では、臨床情報(がんの有無)付き尿検体の回収から検体搬送時の温度のトレースや時間の管理、液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)によるバイオマーカーの定量分析、さらに、がん検査モデルの構築とそれに基づくがんのリスク判別、臨床情報と判別結果との妥当性検討など、一連の解析フローを半年間繰り返し実施する。

――この検査方法が実用化されれば、血液検査などを嫌がる子どもたちにも受け入れられるだろう。

今回、LC/MSによる定量分析をシミックファーマサイエンス社、解析データの評価を名古屋大学医学部附属病院、それぞれの協力を得て行う予定だという。日立はこの取り組みを通して、種々のデータを取得して技術課題を洗い出し、尿中代謝物によるがん検査の実用化研究を加速する構えだ。