植物機構モデルとAIにて確実なスマート農業めざす

日本の農業は衰退傾向にある。産出額が減少し、離農者の増加もあり就業人口は200万人を下回り、耕作放棄地が拡大している。それはただ少子高齢化によるものではないだろう。

たとえば農林水産省の平成28年 個別経営の営農類型別経営統計-野菜作・果樹作・花き作経営-によると、露地野菜作りの全国平均所得は243万円。施設野菜作りでは552万円となり、いずれも前年より増加しているが、果たして多くの若者に魅力的な仕事だと思ってもらえるか。

この分野では植物の安定供給と農業経営の収益向上が重要課題となっている。しかし一般に、天候や植物の生育状態の良否など様々な条件の影響を受け、需要に応じた柔軟な農作物の供給が困難――。栽培ノウハウは、個々の農業従事者に依存することが多く、圃場ごとに収穫の時期や量、品質のばらつきが生じ、四定(定時、定量、定品質、定価格)の実現に向けた生産現場の改善を要するという。

九州大学と富士通は、AI(人工知能)を活用した、農業生産の高度化と安定性向上を目指し、今月より2年間、農業分野における共同研究を実施する。

九州大学の生体計測技術で計測された草丈や葉面積などの植物の生育状況と、植物理論に時空間変動情報を取り入れた独自の「植物機構モデル」を、富士通が今回開発する「AIエンジン」に組み込み、成長速度や収穫時期などをリアルタイムに予測する。そしてそれらの予測に基づき、生産現場における植物の生育を制御することで、需要にあわせた効率的な植物栽培を実現しうる仕組みを研究開発するという。

両者の技術を融合させて、「生育状況の収集・可視化」、「生育予測」、「環境制御」、「スマートハウス」といった栽培サイクルをまわす。研究成果は、富士通グループで活用推進および効果検証を行うとともに、農業向けソリューションとして提供。九州大学ではスマート農業教育を実施し、成果の普及と人材の育成を推進するという。