情報通信
ICT活用事例、鳥獣による農作物被害を減らす
近年、里山の減少などにより、人間と野生動物の生活圏が近くなっている。カラスだけでなく、イノシシ、シカなどの生息域が拡大し、これら野生鳥獣による農作物被害が深刻化している。
農林水産省の「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成28年度)」によると、被害総額は前年度に比べて微減しているものの、いまだに約172億円という高い値を示している。さらに、野生鳥獣との不慮の接触が人的被害をもたらすこともあり、対策は急を要する。その一方で、狩猟免許所持者の高齢化が進み、狩猟の効率化が課題になっているという。
NTT西日本および日立製作所はきょう、長崎県五島市にICT(情報通信技術)を活用した鳥獣害対策システムを導入したことを発表した。今回の取り組みは総務省の平成28年度補正予算「ICTまち・ひと・しごと創生推進事業」として採択されたものであり、同システムは、調査・捕獲区域に設置した出没検知センサーおよび捕獲検知センサーをGIS(地理情報システム)と連携させ、野生鳥獣の出没や捕獲などの状況をリアルタイムで通知・可視化する。
出没検知センサー/捕獲検知センサーは、野生鳥獣の出没や罠の作動をセンサーが検知すると、自動的に写真撮影を行い、宛先に登録した捕獲員にメールを送信。これにより捕獲員は現場の状況を迅速に把握できる。そして、鳥獣害対策用GISは、前記両センサーの情報をリアルタイムに収集し、地図上に可視化。罠や柵などの情報を登録することで、鳥獣害対策に関わる情報を一元的に管理可能となる。
同システムを、昨年11月から五島市にて運用した結果、福江島で農作物に大きな被害をもたらしていたイノシシの捕獲頭数が前年度比5倍以上に増加し、「捕獲効率の向上」を実現した。ほかに市街地での「鳥獣被害の低減」、「捕獲計画立案の高度化/外部情報提供の効率化」といった効果が得られたという。