標準外径光ファイバにて伝送能力の世界記録を達成

近ごろ人もモノも地球規模のネットワークにつながっている。先端技術による「製造強国」をめざし、TOKYO2020を控えた日本では、産業や医療分野でIoTが拡大しつつあるうえに、4K8K映像の配信準備も加速度的に進められている。通信基盤が悲鳴を上げている。

先進各国では、増大し続ける通信トラヒックに対応するため、従来の光ファイバの限界を超える新型光ファイバと、それを用いた大規模光伝送の研究が盛んだ。主に研究されている新型光ファイバは、複数の通り道(コア)を配置した「マルチコアファイバ」と、コア径を大きくして一つのコアで複数の伝搬モードに対応した「マルチモードファイバ」――は従来、モードにより光信号の到着時間が異なるため、大容量化と長距離化を同時に満たす伝送は難しいと考えられていたという。

NICTネットワークシステム研究所とフジクラは、既存設備でケーブル化が可能な標準外径(0.125mm)、3モード伝搬の広帯域波長多重伝送が可能な光ファイバを開発。モードにより光信号の到着時間が異なるマルチモードファイバの問題点を克服し、毎秒159テラビットで1045kmの伝送実験に成功した。 この結果は、伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると、毎秒166ペタビット×kmとなり、標準外径光ファイバにおけるこれまでの世界記録の約2倍になる。

今回、伝送容量を確保するため348波長全てに対して16QAMという実用性の高い高密度な多値変調光信号をモード多重し、MIMO(信号分離)処理を行い、伝送距離を1000km超まで伸ばし、大容量基幹系の通信で利用可能であることを示したという。両者の論文は、第41回光ファイバ通信国際会議「OFC2018」にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Post Deadline Paper)として採択されたとのことだ。