ウェアラブルセンサで長期ストレスを推定する

近年、健康経営が重んじられている。それは従業員の健康管理を経営の視点で捉え、考え、具体策を実行することであり、働き方改革の一環でもある。

従業員を多く抱える上場企業への投資判断・評価の指標として、経産省は東証とともに、それを実践している企業を「健康経営銘柄」として選定し公表している。一方、労働安全衛生法の改正により、企業はストレスチェックの実施が義務化され、厚労省の委託を受けた日本産業カウンセラー協会は「こころの耳」にてメンタルヘルスの自己診断方法などの情報を提供している。

各人の健康維持および向上は、組織全体の生産性を高めることになる。従業員が抱える心身の不調要因として、長期的なストレス(継続的な仕事量・質の過多、険悪な人間関係等による精神的緊張)の蓄積が挙げられる。長期ストレスの程度を会社と本人が常日頃から把握し、対処していくことは極めて重要だがそれを客観的に捉えることは難しい。

アンケートは頻繁に行えず、ストレスの高まった人の発見が遅れる可能性があり、近年開発されたリストバンド型デバイスでは、ストレスが高い人と低い人の2段階に分別する技術は開発されているものの、ストレスの増加過程など、細かなストレス状態の推定は困難――高ストレスになる兆候の検知は不可能だったという。

NECは、ウェアラブルセンサを用いて取得した生体情報から、長期ストレスを段階別に高精度に推定する技術を開発した。同技術は、心理学の知見(二次的なストレス評価)から新たに見出した生体情報の特徴を用いて、段階別に高精度な長期ストレスの推定を可能にする。そして、高ストレスの兆候を含めて把握することで、従業員本人も「高ストレスになることを未然に防ぐ」ことを実現する。

今回の技術を同社内で検証したところ、従来デバイスよりも正確に長期ストレスを推定でき、アンケートによるストレス値との比較で平均誤差±3.3が確認できたという。