穴の空いたグラフェンが卑金属の性能を引き出す

東北大学は、シリカナノ粒子を付着させたニッケルモリブデン卑金属多孔質合金の上にグラフェンを蒸着することで、ナノサイズの穴の空いた3次元構造を持つグラフェンで覆われた、酸性電解液中で長時間溶けずに水の電気分解で運用できる水素発生電極を開発した。

筑波大学数理物質系 伊藤良一准教授、大阪大学 大戸達彦助教、東北大学 阿尻雅文教授らが協力して成功。研究の成果は、2018年3月16日付「ACS Catalysis」で公開された。

このグラフェンのナノサイズの穴は、酸性条件下ですぐに溶解してしまう卑金属電極に対して、「酸性電解液と卑金属表面との過度の接触を防いで卑金属の溶出(腐食)を最小限に抑える」、「酸性電解液と卑金属表面が直接接触できるナノサイズの化学反応場を与える」という二つの役割を持っている。

研究で開発した卑金属合金電極は、従来の卑金属電極は酸性電解液で10分も経過せずに腐食してしまうのに対して、初期電流値を2週間以上維持した。現在、次世代エネルギー源として注目される水素の、クリーンな製造プロセス(水の電気分解)において、電極に用いられている白金(1グラム当たり3800円程度)の使用量を減らすことが課題となっている。この電極は白金の100分の1のコストで合成できることから、大量生産への移行を視野に、低コストな電極への展開が期待されるという。