海外投資家と、有価証券の約定情報ブロックチェーンで

近年、海外の機関投資家――非居住者取引が、株式や国債など有価証券の取引総額の6割を超えている。日本市場に欧米の年金基金などが投資する際、時差や税制の違いなどは、日本の金融機関が提供する様々なサービスによって吸収されているという。

非居住者取引における注文取次、保管・決済、株主としての権利行使の代理サービスでは、関係者数が多く、決済指図をデータとしてリレー処理するため、金融機関ごとに迅速かつ確実な事務作業を要する。情報に齟齬があれば決済不能(フェイル)状態を招き、遅延損害金(フェイルチャージ)などが発生する。ゆえに自動処理化を推進し、フェイルの抑制に取り組んできた。

国内金融機関は、情報の事前確認手段が限られている(一般的に海外の機関投資家・証券会社間で約定後、決済指図のみを受ける)。一方で、有価証券の決済期間短縮が世界規模で進んでいて、非居住者取引でもさらなる事務の迅速性と確実性の向上、支援システムが求められているという。

日本ユニシスは、非居住者取引の約定情報連携について、秘匿性を保ちながら企業や業態を越えた情報の共有が効率的にできるブロックチェーン/分散型台帳技術(DLT)を適用した実証実験を、10社の金融機関と共同で開始する。

日本取引所グループによる業界連携型技術検証の枠組みを活用する。日本ユニシスは今回、今後の金融取引における有力なブロックチェーン/DLT技術である「Hyperledger Fabric1.0」と、「Microsoft Azure」のハイブリッド環境を用いて、約定段階の情報を関係当事者が共有する仕組みの実現に挑む。

フェイルの抑制が見込め、決済期間短縮化への対応も容易になり、業界全体で大きな経済効果を生むことが期待される。ブロックチェーン/DLTにより、従来よりも「早く・安く」高い秘匿性・堅牢性を保持した情報共有システムの構築が可能か否かを検証するという。