IoTと人のしくみ、街ぐるみで救命の輪をスピーディーに

近ごろスマホアプリでもAED(自動体外式除細動器)の設置場所が確認できる。けれども普通の人は、それを確実に使えるかは心許ないし、周りの人も慌てふためき119番さえ失念しているかもしれない。

消防庁資料によると、平成28年中に一般市民が目撃した心原性心肺機能停止者数は2万5,569で、そのうち一般人が心肺蘇生を実施した数は1万4,354(うち除細動実施:1,204)。一方、一般人が心肺蘇生を実施しなかった傷病者数は11,215(43.9%)となっている。

そこできょう、三井不動産、シスコシステムズ、Coaidoの3社は、ICT(情報通信技術)を活用した安心・安全の街づくりを目指す実証実験を行った。救命率向上を目指しカメラ、AI(人工知能)やネットワークシステム、救命アプリを連携させて街全体で「救命の連鎖」を繋ぐ日本初の試みだという。救命の連鎖とは、「心停止の予防」「早期認識と通報」「一次救命(心肺蘇生とAED)」といった3つの輪を現場に居合わせた市民が素早く行い、医療従事者らによる「二次救命処置と心拍再開後の集中治療」の輪へと迅速かつ確実に繋ぐしくみ。(引用:厚労省「救急蘇生法の指針2015」)

実験は「共助の精神」が古くから根付く日本橋、「コレド室町1内にて、周囲に人が居ず、心肺停止状態になった場合」を想定して実施。1)人の目に加えて防犯カメラやCisco Spark等を用い、街や建物の中で倒れた人を素早く検知する、2)救命アプリ「Coaido119」を中心とし、街で働く人、住まう人それぞれが救命プロセスに参加できる、3)ICTを活用した民間での救命情報共有・展開の迅速化と救急隊へ的確に情報を提供できる、各仕組みの構築を目的にしている。

3社は「救命の連鎖」をスピーディーに繋ぐ、今回の実証実験をモデルケースとし、パートナーを増やしつつ、他の街での救命率向上にも取り組んでいく構えだ。