糖尿病患者と医師、くすりの効果とリスクを共有して治療方針を決める

情報を制するものはどの世界でもリーダーになれるし、情報を共有するものは人に動機と安心、チームに目標を与える。そして今、様々な分野で注目されているインフォマティクスは、医療分野でもその活用が進み、ヘルスケア手法を変えつつある。

米国では、糖尿病の患者数が2,310万人(65歳以上の4人に1人)にのぼるものの、患者の約半数は医療ガイドラインで定められている治療目標(HbA1c値 7%未満)を達成していない。個人が民間健康保険を利用するため、保険償還対象薬剤に制限がある場合や、加入保険によって一定の自己負担枠を超えるまで保険償還されない場合もある。治療方法や処方薬の選択によっては、経済的負担が大きくなり、治療中断、治療薬の変更などにつながる要因の一つになると言われている。

そのため、近年の医療現場では、患者が医師や薬剤師の判断に一方的に従うのではなく、患者自らも治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受ける、共有意思決定の考え方が重要視されつつあるという。日立製作所は、米国ユタ大学と共同で「糖尿病治療の処方薬選択支援システム」を開発したと発表した。

同システムは、機械学習を活用した解析によって、処方薬の種類別に、糖尿病の代表的な指標であるHbA1c値の低減目標(治療目標)を達成できる確率を予測し、患者別の特性も考慮した内容で、それぞれの効能・効果、副作用などのリスク、価格等の項目を、連携する電子カルテの画面上で比較表示する。これにより、患者は、詳細なデータを画面で見ながら、医師との話し合いで治療方針を決められるため、長期にわたる治療を納得して続けられるようになることが期待される。

今回の技術は医療情報学会「AMIA 2018 Informatics Summit」で発表予定だという。両社は今後このシステムを用いた臨床試験をめざし、共同研究を進めていく構えだ。