持ち運び可能な微生物センサーを開発

名古屋大学は、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)において、宮田 令子プログラム・マネージャーが担当している研究開発プログラムの一環として、持ち運び可能な微生物センサーを開発したことを発表した。

名古屋大学 大学院工学研究科の馬場 嘉信教授、安井 隆雄准教授、矢崎 啓寿大学院生らが、九州大学 先導物質化学研究所の柳田 剛教授、大阪大学 産業科学研究所の川合 知二特任教授との共同研究で実現。研究成果は、米国国際学術誌『ACS Sensor』電子版に掲載された。

環境測定デバイスの分野では、効率良く物質のサイズ計測を実現する計測センサーとして、最近、電流計測センサーが注目されている。そのセンサーは低ノイズな実験室において広く使われているが、屋外における細菌やウイルスの大気中浮遊物などのバイオエアロゾルの実サンプル計測は、実験室のような理想の環境下とは異なり、サンプルの分析や検出が正しく行えない欠点があった。

研究チームは、これまでに開発してきたバックグラウンド電流を抑制する技術に着目。バックグラウンド電流抑制技術によって、高電圧を使用する際に生じるシグナルの増強が可能となり、ある程度、ノイズが入る条件下でも微粒子検出に影響が無くなったことから計測系が壊れにくく頑丈になり、薄く軽いシールドによるどこにでも持ち運び可能な電流計測センサーを開発することに成功したという。

今回の研究では、ブリッジ回路を搭載した電流計測システムをベースとした持ち運び可能な電流計測センサーを開発した。また、このセンサーは屋外や極限環境でも動作することが確認された。

このセンサーを用いることで、再現性良く、直径500nm~1000nmの粒子を計測できることが明らかになった。また、このセンサーによって計測した黄色ブドウ球菌の直径分布は、電子顕微鏡によって得られる分布と高い精度で一致することが確認された。