どこでも高品質、5G通信の安定に向けて

第5世代移動通信システムの実現が急がれる。4K8K映像に対応するモバイル通信の高速・大容量化に加え、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の世界を現実にする多端末同時接続、そして自動運転車両でも必須の低遅延・高信頼性といった特長を備えているために。

各国が研究開発に懸命な5Gだが、標準規格はまだない。次世代の超高速通信の早期実現に向けて、国際的な標準化団体3GPPが中心となり、様々な組織が規格の統一に取り組んでいる。5Gについて、日本では2020年のサービス開始が見込まれている。だが現状、端末が接続するリモート局(DU)相互の電波干渉により、通信品質が低下する――セルが密の5Gではより大になるDU間の干渉という課題を抱えている。

5G通信の安定および規格に向けて、NECは、NTTドコモと共同で、集約基地局(CU)が複数のDUを制御するC-RAN(Centralized-Radio Access Network)構成の超多素子AAS(Active Antenna System)基地局システムを使用し、DU間の協調制御を行う検証実験を、横須賀リサーチパークやNEC玉川事業場などで開始した。

通信可能範囲の境界にある複数の端末に対して、各端末と通信しているDUが独立にビームを形成すると、互いのDUからの電波干渉により、端末の動画のダウンロードスピードが低下するなど通信品質が低下する。屋外環境において、CUに接続された2台のDUの通信境界付近に位置する複数台の端末が各DUと通信している状態で、DU間の協調制御を行った。今回の検証では、電波干渉による通信品質の低下を防ぎ、下りスループットが最大50%程度向上し、場所を問わず安定した高品質通信が実現可能であることを確認したという。

今回のシステムや5Gに向けた取り組みは、「Mobile World Congress 2018」にて披露される。