抗うつ剤21種の特徴を網羅的に比較評価しわかったこと

全世界人口のうち3%~16%が生涯にそれを経験するとも言われていて、世界保健機関の推計では、人類が健康を損なう最も大きな原因の一つとされている。うつ病の治療に、今も多くの人が取り組んでいる。

患者数は増加傾向にある。うつ病では、物事への考え方と行動の制御を試みる認知行動療法などを選択できつつあるものの、人的・金銭的コストから、一般的には抗うつ薬治療が行われる。しかし現状、どの薬が効果的なのか、副作用がどの程度起きやすいのか、数十種に及ぶ薬剤を網羅的に比較研究できていないために、必ずしも根拠に基づいた治療戦略は取れていないという。

京都大学とオックスフォード大学の研究グループは、世界各地で行われてきた第一、第二世代の抗うつ剤同士で効き目と副作用を直接比較した522件(延べ116,477人)の臨床試験結果を集めて統計的に処理し、21種の薬剤の特徴を網羅的に比較し評価した。結果、アミトリプチリンやエスシタロプラムなど8種の抗うつ剤は特に効果が強く、エスシタロプラムを含む6種の薬剤は比較的副作用が起こりづらいことが分かったと発表した。

上記試験結果のうち、大人を対象に抗うつ薬21種と偽薬の効果を直接比較したものを選び、その正確性や被験者の症状、人数の違いを吟味しつつ、抗うつ剤の効果と副作用で投薬を中止した割合を比較した。解析の結果、21種は全て偽薬よりも効果があることを確認したが、幅があり、効果の現れやすさを表すオッズ比では最も効果が期待できるアミトリプチリンの2.13に対し、レボキセチンでは1.38に留まった。試験中に副作用で投薬を中止する割合も同様に薬剤同士で差が見られたという。

医師の個人的な経験や印象だけではなく根拠に基づいた投薬治療を進めていく上で重要な参照情報になると考えられる。今回の研究成果は、オランダ・エルゼビア社の医学誌「The Lancet」オンライン版に掲載された。