洋上風力発電の高効率化と省スペース化に貢献

内閣府プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/次世代パワーエレクトロニクス」で、三菱電機が、3.3kV SiC(炭化ケイ素)パワー半導体モジュールを適用したMMC型HVDC変換器セルの技術検証を実施し、変換器の電力損失低減と小型・軽量化を実現したと発表した。

パワーエレクトロニクスは、電力インフラや自動車、鉄道車両、産業機器や家電など生活に身近な様々な用途で適用され、それらの高性能化や省エネルギー化を支える重要な技術分野。

NEDOによると、日本に強みがあるこの領域を強化するため、同機構が管理法人を務める内閣府プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/次世代パワーエレクトロニクス」では、2014年度からSi(シリコン)に代わるSiCなどの新材料パワー半導体デバイスを製品へ適用するための技術開発を推進し、電力機器の大幅な高効率化と小型化を目指してきた。

今回のプロジェクトで三菱電機は、3.3kV SiCパワー半導体モジュールをMMC型HVDC変換器セルに適用し、さらにモジュールを並列化することで、変換器セル内部の抵抗を抑えた。並列化では、電磁界解析を用いて変換器セル内部の電流分布を可視化し、並列化したSiCパワー半導体モジュールに電流が均等に流れるように部品を配置。これにより、三菱電機製のSiパワー半導体モジュールを適用した変換器セルと比べて、電力損失を50%に抑えた。

また、SiCパワー半導体モジュールを適用することで、スイッチング周波数を上げることが可能となり、周辺部品であるコンデンサ容量を低減。電力の低損失化により、冷却装置の小型化を実現し、変換器セルの体積を21%、重量を14%低減した。

変換器セルは、近年の再生可能エネルギーの活用推進を背景として普及が拡大する洋上風力発電システムなどへ適用できる。洋上風力発電で得られる電力は、長距離・大容量送電に適したHVDC送電により電力使用地域に送電される、既存の交流系統に接続するために、交流と直流の変換器が必要になる。

この変換器セルを用いることで、洋上風力発電などの長距離・大容量送電の大幅な高効率化が期待できる。また、洋上風力発電では、HVDC変換器を設置する洋上プラットフォームの建設費削減のため、変換器の小型・軽量化が求められている。この技術は、変換器設置場所の省スペース化による設置コスト削減が図れる。