インフォマティクスにて新材料開発! 熱電変換効率を100倍/年に向上

情報を科学する、インフォマティクスは情報を自動処理することが理想である。ここに近年、人工知能(AI)が台頭している。

機械学習や解析技術にて大量データから潜在的な情報を抽出したり、将来の動向を予測したりする事例がさまざまなビジネスおよび研究領域で一般的になりつつある。たとえば、バイオ・製薬・化学の分野においてはコンビナトリアル型、探索候補全体の傾向を把握しながら新しい物質を網羅的に調べてゆく技術の進歩に伴い、ヒトゲノムプロジェクト等、インフォマティクスが盛んに活用されている。

金属、半導体、酸化物など固体材料を扱う分野でも、研究開発の期間短縮やコスト抑制を目的に、機械学習・解析技術の利点を最大限に活かす手法がマテリアルズインフォマティクス(MI)として注目されているという。NECと東北大学AIMRの共同研究グループは、スピン流(電子の磁気的性質)を用いた熱電変換デバイスの開発に、NECの"AIによって未知の材料の特性予測を行う新技術"を適用し、約1年で熱電変換効率を100倍に向上させたことを公表した。

成果はJSTの「ERATO 齊藤スピン量子整流プロジェクト」および「理論・実験・計算科学とデータ科学が連携・融合した先進的MIのための基盤技術の構築」の支援を受けて得られたという。

異種混合学習技術や複数の特化型機械学習を用いた「材料開発用AI技術群を開発」、1000種類以上の異なる組成を持つ薄膜材料も一度の成膜プロセスで作製可能な「コンビナトリアル型データ取得基盤の確立」といった特長を備えた、今回の手法をスピン流熱電変換デバイスの開発に駆使した結果、AIが導き出した新材料の設計指針に沿って、実際の材料を設計し、熱電変換効率を強化できることを実証した。

両者は今後、同デバイス技術の実用化や、無電源で何十年も稼働するIoTデバイスの実現などを目指し、さらなる研究開発を進めていく構えだ。