ニューラルネットワーク演算処理を1/8の消費電力で実現

人間の脳神経回路網を摸したコンピュータシステム、ニューラルネットワークは情報を並列分散処理するAIの基盤である。近年、知的ゲームで人間に勝利し、画像処理等での活用が期待されるディープラーニングも、多層のニューラルネットワークで構成されている。

人工脳すなわちAI技術の活用は、画像処理だけでなく、製造、物流、医療、金融、インフラ向けなど様々な事業分野への拡大が注目されている。けれども、クラウドベースAIを組み込み機器に用いる場合、大量のセンサデータと、それをニューラルネットワークで解析するクラウドとの間で膨大な通信が必要となり、これが導入障壁として懸念される。一方、AI搭載機器では、ハードウェアのコストや消費電力が多大になる課題があったという。

東芝はきょう、組込み機器向けの超低消費電力アナログAIアクセラレータチップを開発したと発表。同技術によりニューラルネットワーク演算の大部分を占める積和演算処理を従来のデジタル回路と比べて1/8の消費電力で実現したという。この技術の適用により、従来困難であったエナジーハーベスト(環境発電)や遠隔無線給電で動作する組込み機器へのAI搭載が可能となり、機器の異常検知や寿命予測などへの応用が期待できるとした。

新たな演算処理技術では、演算回路に東芝独自の発振回路を採用し、その発振時間と発振周波数を動的に制御することで演算を行う。これまで個別のデジタル回路で処理されていた乗算、加算、記憶を1つの回路で処理可能となり、演算処理の際に動作するトランジスタの数を削減することにより消費電力の大幅な低減を実現する。

同技術を搭載したAIアクセラレータチップを用いて、画像認識や故障検知のニューラルネットワークの推論処理のデモ動作にも成功したとのことだ。