特に窒素酸化物(NOx)を効率的に浄化する触媒の開発が急務となっている。自動車の排ガス触媒については今、3大有害物質である一酸化炭素(CO)・炭化水素(HC)・窒素酸化物(NOx)を除去する三元(さんげん)触媒が有名だが、より効率的な運転が可能となる希薄燃焼条件で発生した排ガスでは、酸素濃度が高くなり触媒として十分に働かないため、新たな触媒(スーパー触媒)が求められているという。
NEDOはきょう、'16年から取り組んできたエネルギー・環境新技術先導プログラムにおける「超精密原子配列制御型排ガス触媒の研究開発」にて、同研究開発メンバー各社・団体とともに新たに開発したゼオライトの超高速合成法、粉体の微粒子化法などを組み合わせ、ゼオライト(イオン交換性を有する合成ケイ酸塩)に多くの活性点を導入しながら、欠陥を極限まで抑えることで、低温から高温までいずれの温度帯でも高い耐久性と活性を示す自動車用NOx浄化触媒を開発したことを公表した。
化合物にアルカリ金属や有機物などを加えて、数日~数週間高温水中で加熱することで合成――シリコン、アルミニウムおよび酸素原子が規則的に配列した骨格構造を持った結晶になっている。ゼオライトにおいて、同研究では、ナトリウムイオンを用いて数十分以内でNa型ゼオライトを合成後、これを適切な粒径に整粒し、NaイオンとCu(銅)イオンを交換することで排ガス処理触媒の活性を発現させた。ゼオライト内の組成の定量測定(透過型電子顕微鏡法による)に加えて、ゼオライト骨格に導入された金属イオンの直接観察、精密な吸着法による細孔特性の評価も可能となった。
新規合成法によるゼオライト触媒の開発を東京大学、産業技術総合研究所、三菱ケミカルが実施し、粉砕・再結晶化法といったポスト処理によるゼオライト触媒の高性能化を栃木県産業技術センター、アシザワ・ファインテックが実施。触媒機能発現機構および劣化機構の解明をファインセラミックスセンター、産業技術総合研究所が担当したという。
今回得られた触媒は、低温での活性向上に加えて、高温での耐久試験後もほとんど劣化せず高い活性を維持することから、従来使用できなかった温度帯での使用が可能となり、自動車の燃費が飛躍的に向上することが期待される。また、今回の研究成果を技術基盤として応用することで、NOx触媒をはじめとする種々のゼオライト系触媒のさらなる高性能化が望めるとのことだ。