糖尿病治療薬が、肝臓への脂肪蓄積を減らすことが明らかに!

メタボリックシンドロームの一表現型と考えられている。非アルコール性脂肪性肝疾患は、進行すると非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を経て肝硬変や肝細胞癌(NASH肝癌)に至るが、減量のほかに予防策がない。

確立された治療法のないことが大問題になっているという。東京医科歯科大学・九州大学大学院教授らの研究グループは、九州大学、名古屋大学、田辺三菱製薬と共同で、2型糖尿病の治療薬として既に臨床応用されているSGLT2阻害薬カナグリフロジンの経口投与が、脂肪肝からNASHを経てNASH肝癌の発症を遅延・抑制することをマウスにおいて初めて見出した。

同研究グループはすでに、同阻害薬が肥満マウスの脂肪組織重量の増加を伴って脂肪肝を抑制することを報告していた。だがNASHおよびNASH肝癌への効果は不明だったため、今回、独自開発したNASHモデルマウス(高脂肪食/高ショ糖食の負荷により、ヒト肥満症患者と同様の糖脂質代謝障害を呈す)を用いて、カナグリフロジンのNASHおよびNASH肝癌に対する予防効果を検討――。そして、上述の成果が得られたという。

カナグリフロジンは同モデルマウスの脂肪組織におけるグルタチオン代謝を還元型グルタチオン(細胞障害につながる活性酸素種を消去する働きを有す)優位に変化させ、脂肪組織のエネルギー蓄積能を増加させることも明らかにした。

革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「生体恒常性維持・変容・破綻機構のネットワーク的理解に基づく最適医療実現のための技術創出」研究開発領域(平成27年4月日本医療研究開発機構の発足に伴い、JSTより移管)における研究開発課題「細胞間相互作用と臓器代謝ネットワークの破綻による組織線維化の制御機構の解明と医学応用」の一環で行われた。

研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。