植物の多様な二次代謝系の進化を解明!

生物において、自身の生命現象に直接関与しない物質を合成することを二次代謝といい、これでできたものを二次代謝産物という。植物においては多彩で有用な化合物を産出する、なかでも窒素を含む塩基性化合物であるアルカロイドは、顕著な生理活性を示す。

医薬品として用いられるものも多く存在する。アルカロイドのうち、チロシンから生合成されるイソキノリンアルカロイドは、モルヒネ、ベルベリン等の有用医薬品を含むとともに、その構造の多様性が知られている。生合成酵素やその遺伝子の単離と解析等が国内外で精力的に進められ、多くの生合成酵素遺伝子の同定が進んでいる。今日、これらの知見をもとに、植物における代謝工学に加え、微生物による合成生物学的生産等が可能となってきている。が、生合成系の進化発展についてはそのしくみがまだ十分に解明されていないという。

京都大学の研究グループは、国立遺伝学研究所、かずさDNA研究所と共同で、ケシ科ハナビシソウのゲノム配列を解読し、ハナビシソウが作り出す有用二次代謝産物イソキノリンアルカロイドの生合成酵素遺伝子の構造と機能を解析した。結果、植物が有用物質生産系を進化させるしくみ――CYP82遺伝子ファミリーが機能分化し、イソキノリンアルカロイドの多様化に貢献していることが明らかになったと発表。

ハナビシソウは、北米原産の園芸植物で、薬用植物でもあり、イソキノリンアルカロイド生合成系のモデル植物にもなっている。そのゲノム(遺伝子+染色体)配列を読み解いた。情報をもとに、同植物が作り出す有用二次代謝産物イソキノリンアルカロイドの生合成酵素遺伝子、特に、アルカロイドの多様性を生み出すチトクロムP450遺伝子の構造と機能を解析した。そして、上記の事実が判明したという。

今回の研究成果は昨年末、オックスフォード学術オンライン誌 「Plant and Cell Physiology」に掲載された。