情報通信
日本標準時の原子時計、米粒サイズにしてスマホ搭載へ
かつては地球の自転公転に基づき1秒の長さが決められていた。それが1967年にセシウム原子の放射周期を用いたものに改められ、いまでは世界中の原子時計の時刻を加重平均することで国際電子時(TAI)が決定され、協定標準時(UTC)のうるう秒調整も原子時を基準にしている。
高精度で均質な同期網の構築には、原子時計の高精度化に加え、それを搭載した通信ノードの拡充も重要である。携帯端末を含む全ての通信ノードへの原子時計の搭載が理想だが、いまの原子時計は大きさ、重さ、消費電力において可搬性に乏しく、GPS衛星や無線基地局などへの搭載に限定されている。小型化研究の進む欧米のそれでさえ、まだ数cm角大と、スマートフォンなどへの搭載は叶わないという。
原子時計を用いて日本標準時を決定・維持しているNICTは、東北大学、東京工業大学とともに、従来の複雑な周波数逓倍処理を不要とする、シンプルかつ米粒大の原子時計システム開発に成功したことを公表した。
3者の共同研究では、圧電薄膜の厚み縦振動を利用し、原子時計の小型化に適したマイクロ波発振器を提案。薄膜の厚み縦振動は、高い周波数で機械共振を得ることが容易であり、ギガヘルツ帯にある原子共鳴の周波数に対して、そのまま同調動作できる。そのため、今まで必要だった水晶発振器や周波数逓倍回路を完全に省略でき、大幅な小型・低消費電力化――チップ面積を約30%減、消費電力においては約50%減が実現される。
このたびの原子時計システムでは、半導体加工技術を応用し、小型化と量産性に優れる小型のルビジウムガスセルを独自に開発、動作パラメータの最適化により周波数の安定度を1桁以上改善した。技術を実用化すれば、GPS衛星レベルの超高精度周波数源を、スマートフォンなどの汎用通信端末へ搭載することも夢ではなくなるという。今回の成果は、今週英国で開催の「MEMS 2018」にて披露される。