10分で地球を丸ごと撮るひまわり8号、スパコン京と天気予報を革新

近ごろ地球は変だ。年間を通してみれば異常が常態化し、異常気象というフレーズが当たり前になるほど、気候変動が進んでいる。日本でも台風や集中豪雨による洪水、土砂崩れなどのリスクが高まっている。

激しい気象による災害を減らすには、予測し備えることが有効だという。理化学研究所、気象庁気象研究所の共同研究グループは、スーパーコンピュータ「京」と気象衛星ひまわり8号の観測ビッグデータを用いて10分ごとに更新する気象予測手法を開発。台風や集中豪雨、それに伴う洪水の予測への有効性を確認したことを公表した。

ひまわり8号は先代の約50倍量のデータを生み出す高性能センサを搭載、10分ごとに地球全体を撮像する。赤外放射輝度データを、雲の領域も含めた全天候で数値天気予報に直接利用することはこれまで困難であった。ゆえに世界の天気予報センターのシステムでは、雲の連続画像からその動きを追跡して推定する風向・風速や、雲域を除く晴天域の赤外放射輝度データの利用が主だったという。

同研究グループは、'15年最強の台風第13号を対象に、「京」、理研の数値天気予報モデル、データ同化システムを使って3kmメッシュのシミュレーションを行い、雲域を含む全天候で10分ごとにデータ同化――実際に観測された台風の詳細構造を再現した。同年9月の関東・東北豪雨を対象に6kmメッシュでそれを行うことにより、12時間後に予測される大雨の位置や範囲を大きく改善させた。雨の分布を使って、河川流量の予測も行った結果、9時と15時を初期時刻とした鬼怒川の流量予測が改善したという。

豪雨等による災害リスクを一刻も早く捉えて、精度の高い天気予報を可能にする。6時間に36回も予測できる、ひまわり8号の高性能センサによるビッグデータを生かすことで、従来1時間おきの更新だった気象予測が10分ごとに行えるようになる。研究成果は米国科学誌電子版に掲載された。