X線自由電子レーザー光の干渉具合、パルスごとの評価理論を確立

それは兵庫県の播磨科学公園都市にある。世界最高性能の放射光を生み出せる「SPring-8」では、ナノやバイオ・テクノロジをはじめ多様な産業利用での研究が、国内外の研究者らによって行われている。

光の波長がオングストローム(100億分の1メートル)級、コンパクトなX線自由電子レーザー施設なので、SPring-8の"S"を頭に「SACLA」と名付けられた施設では、一昨年、周波数30Hzで供給されるX線パルスを用いて、非結晶試料からの高効率回折データ収集装置を実用化に成功。同パルスをもれなく試料に照射し、短時間に膨大量のX線回折パターンの収集ができたとした。

SACLAでは、波面がそろった大強度X線パルスを発生させられる。X線を散乱する能力が乏しい試料の回折実験など、特に強いX線自由電子レーダー(XFEL)パルスが必要な場合、集光ミラーを用いてビームサイズを小さく絞り強度を高める。ミラーの位置を適切にすれば、XFELパルスの波面も試料位置でそろうと考えられてきた。'14年、XFELパルスの空間コヒーレンス(光波の干渉具合)を表すパラメータを測定したところ、完全に波面がそろっているときを1.0とすると、SACLAでは0.7程度しかない、とドイツおよびSACLAの共同研究グループが発表――。

そこで今回、理化学研究所の研究チームは、解析方法に大きな問題があることを発見。空間コヒーレンスを1秒に30回のパルスごとに正しく評価する理論および測定方法を考案し、確立――集光ミラーで加工しても空間コヒーレンスがほぼ完全な集光XFELパルスが得られていることを確認し、パルスごとに試料の回折に寄与しうるビームの大きさや、周囲にもたらす放射線損傷領域を見積もることができたと公表した。

今度の手法と理論は、他のXFEL施設でも広く利用が期待され、英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。