先のリオ五輪・パラリンピックで一部海外メディアは、人工知能(AI)を用いてスコアなどの配信を行っていた。株式投資家向けの決算短信等でAIを使うこともある昨今だが、より込み入った事象や内容を伝達したいときにはまだ、人間抜きでは記事の品質を保てない。
他方、様々な分野を扱いそれぞれ高品質の記事で信頼を得ている、新聞社がニュース配信するメディアは紙媒体にとどまらない。WebニュースやSNSなど多様化が進んでいる。配信するメディアごとに文字数の制限が異なるため、新聞社はそれに合わせて記事を要約する必要があり、その作業は従来人手に依っていて、作業効率の向上やコストの削減が困難であったという。
信濃毎日新聞社と富士通は、AI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用した記事要約の実証実験を行い、多様なメディア配信に活用できる自動記事要約システムを実現したときょう発表した。同システムを、信濃毎日新聞社はCATV向けのニュース配信サービスに導入し、今年4月より本格的な運用を開始。これにより、CATV向けニュース配信サービスの運用の迅速化を実現するという。
同新聞社の現行ワークフローを変更することなく容易に利用できる、Web APIを富士通が提供する。システムは、富士通研究所が開発した自然言語処理技術と機械学習を組み合わせた自動要約技術を活用したもの――。過去ニュースを用いた実験では、人が5分程度費やしていた記事の要約作業を瞬時に自動実行し、既存の機械的要約技術であるLEAD法(先頭から順に文字数制限の範囲内で文を抽出する方法)よりも人手に近い高精度な要約が可能であることを実証した。
自動記事要約システムについて、富士通は今後、多様なメディア向けに製品化を進めるとともに、様々な業種でも活用可能となるよう、汎用AIクラウドサービスの一部として提供していく構えだ。