テラヘルツ電磁波の発生に成功!

コンセントから出てくる電気の周波数は50ないし60ヘルツ。ラジオのキロヘルツ、テレビのメガヘルツ帯よりも遙かに高く、現行スマホやWi-Fi機器で利用されている2ギガヘルツ程度よりも1000倍高い周波数、テラヘルツ帯の電磁波は様々な分野に革新をもたらそうとしている。

高速無線通信、空港でのセキュリティー検査、ガン部位の識別、封筒内の薬物検知、宇宙観測などでの応用が実現・期待されている。テラヘルツ波を連続して発振する光源として、高温超伝導体のナノ構造を利用したものが'07年に発明された。以降、この光源の実用化をめざし、世界中で精力的な研究が行われている。が、複雑な調整を要するデバイスしか得られていなかったという。

京都大学の博士課程学生および准教授、筑波大学助教らの研究グループは、高温超伝導体を用いた超伝導テラヘルツ光源デバイスから、最大99.7%の円偏光度をもつテラヘルツ電磁波の発生に成功。単独の光源から発生されたテラヘルツ波としては最高の円偏光(複数の波のピークがずれていて、片方の波がプラスからマイナスに移る際に別の波がピークを迎える状態)度であることを公表した。

円偏光テラヘルツ波は、超高密度移動体通信に必須なだけでなく、光学異性体の透過率が電界の回転方向によって異なるため、損傷を与えずに物質の区別が可能であり、医薬品の識別・組織の診断などに応用できる。コガネムシの如く回転方向により異なる反射率を持つ物体の識別にも有用だという。

同研究グループが作製した超伝導テラヘルツ光源は、物質本来の結晶構造を基盤としたシンプルな一枚板デバイスであるため、耐久性・量産性に強みをもつ。動作温度の上限は市販の極低温冷凍機で容易に到達できる80ケルビン(マイナス190℃)程度のため、ポータブル応用も提案されている。成果は米国物理学会誌「Physical Review Applied」に掲載された。