重要文化財の美しさ、VRで忠実に表現

江戸中期の画家、尾形光琳を中心とした絵師らの画風を「琳派」という。彼が影響を受けそれを模写した俵屋宗達の「風神雷神図屏風」は、昭和の切手にもなったため、ご存じの方も多いはず――。出世に100年の隔たりがあった二人は、ただ美意識により結ばれていた。

そしてまた100年後、江戸後期には、姫路城主の弟――西本願寺で出家し権大僧都になったものの後に江戸で隠棲した酒井抱一が、光琳の「風神雷神図屏風」を模写した。晩年抱一は、私淑する光琳の手による屏風の裏に、「夏秋草図屛風」を描いた。

現代の重要文化財となっている屏風の裏表を、仮想現実(VR)が再現する。と、凸版印刷がきょう発表した。同社は、光沢や表面の凹凸、色調など、照明環境や観察方向によって見え方が異なる素材の質感を精確に記録するデジタルアーカイブ技術を開発。これまで困難とされてきた文化財特有の質感をVR上でより忠実に再現可能となったという。

今回、独自の分割撮影手法により、「風神雷神図屛風」と「夏秋草図屛風」(東京国立博物館所蔵)の高精細撮影を実施し、独自合成技術を用いて、分割撮影した画像を生成。各作品30億画素の高精細画像で名作品を実寸大で精確に再現する。

高精細画像に質感要素データを取り込むことで、VR上で設定した照明の位置・強さや視点位置に応じて、文化財の質感を物理特性に基づいて忠実に表現する。技術の活用により、国立博物館シアターで上映する『風神雷神図のウラ -夏秋草図に秘めた想い-』では、ロウソクの光で照らした場合や、月明かりに照らされた場合の見え方など、実際の文化財では不可能な条件下での鑑賞を、より精確にシミュレーションできるという。

同社は、デジタルアーカイブからVR制作、公開までの各工程において、BT.2020の色域基準に準拠した一貫したカラーマネージメントを実施し、色鮮やかでより忠実な文化財の再現を実現しているとのことだ。