主に自動車関連のプレス製品の製造・販売を行う専門メーカーで、タイヤバルブの国内シェア100%を誇る太平洋工業では、これまで経験を積んだ従業員が製造機械故障の兆候察知に努めてきたが、全件把握は難しく、製造機械の故障による突発的な稼働停止時間の損失を減らすことが課題だった。
そこで、太平洋工業は、AIを活用した製品の状態監視や化学製品の品質予知に関するノウハウを保有するNTT Com、ものづくり分野における先端研究を推進する岐阜大学のそれぞれと、動作音や振動データから製造機械の変化を検知し、故障を予知する実証実験を開始することにした。これにより、製造機械の故障を事前に回避することで、工場の稼働率を向上させ、製品の安定的な生産を目指す。
太平洋工業の工場で、製造機械の動作時に、AI技術の一種であるディープラーニングを用いて、NTT Comと太平洋工業が「(1)正常音とのずれを検知し、故障を予知する実証実験」に取り組み、太平洋工業と岐阜大学が「(2)振動の変化を検知し、故障を予知する実証実験」を行う。これらの実証実験から、製造機械の故障予知精度に関する検証を実施する。
正常音とのずれを検知し、故障を予知する実証実験では、NTT Com は、太平洋工業の工場内に取り付けた集音マイクを通じて、製造機械の動作音データをクラウド上に蓄積。その後、収集した動作音データを、NTT研究所の「ノイズキャンセル技術」、AIを活用した「音の特徴解析技術」と「正常音とのずれを検知するモデル」を用いて、動作音が正常かどうかを判別するシステムの開発を行う。
振動の変化を検知し、故障を予知する実証実験では、太平洋工業は、工場内に取り付けた無線式3軸加速度センサーから、製造機械の振動データを収集する。岐阜大学のAIを活用した「振動解析技術」と「振動の変化を検知するモデル」を用いて、振動が正常かどうかを判別するシステムの開発を太平洋工業と岐阜大学で行う。