薬の費用と量をただす試みICTにて始まる

病院でもらった処方箋を手に訪れた薬局で「おくすり手帳は持っていますか」と聞かれる。否と答えて病歴やアレルギーの有無等を書類に記入している脇を、薬剤師との軽い押し問答を終えた高齢の女性が、手提げバッグを薬で膨らませ満足げに通り過ぎてゆく――。

押し問答のきっかけは2ヶ月分の薬を出せ出さないといったものだった。前回分がまだ残っているけれど娘の家にしばらく世話になるからというその人に、薬剤師は病院に確認するなどの対応をしていた。様子に聞き耳を立てていた自分もいつかあんな風に、病院と薬局の常連になるのだろうかと、書き終えた書類を窓口に置いた。

日本は超高齢化社会に足を踏み入れている。平成28年度でさえすでに高齢化率は26.7%(数値:内閣府白書より)、およそ4人に1人が65歳以上であった。この国の課題は医療費の抑制だ。なかでも71%と大きな伸びを示している調剤医療費について、政府はいわゆる門前薬局から地域のかかりつけ薬局への移行やジェネリック薬の使用、重複・多剤投与の抑制等の対策を推進しているが、該投与抑制では効果的な手法が確立されていない状況だという。

IIJ、日本医事保険教育協会、Windyは、健康被害の抑制および医療費の適正な指導を目的としたICT(情報通信技術)活用コンソーシアムを設立し、北九州市における患者への重複投与・多剤投与の抑制に向けた実証実験を開始した。ポリファーマシー(多剤併用)による薬害低減をはかりながら、無駄をなくした医療費の適正な指導を実現する薬剤ソリューションの開発を目指す。ソリューションの提供先は、医療保険事業団体を想定している。

実証実験では、「レセプト情報分析」、「投薬指導」、「コミュニケーション促進」、「飲み忘れ防止・残薬管理」に来年1月から順次取り組み、7月から12月には、服薬状況を見える化することで、患者のさらなる健康増進をはかるとのことだ。