量子コンピュータ、交通系商用アプリへ展開

現在世界に普及しているコンピュータはその設計構造ゆえに、ビックデータが飛び交うであろう明日に性能の限界を迎えようとしている。ために今、"0"であり同時に"1"でもある量子ビットを用いて並列性を高める、新たなコンピュータが注目されている。

量子力学を応用するそれは、超ビッグデータ解析や科学計算や流体開発・創薬シミュレーションなど、これまでスーパーコンピュータが担っていた分野での処理時間を飛躍的に短縮させる可能性を秘めている。が、確固たるアプリケーションはまだない。

特定の計算において従来のコンピュータの1億倍以上の高速化が有望視されている。大規模なデータをリアルタイムで処理することが求められる、コネクティッド時代のモビリティサービスへの活用が期待される一方で、効率よく計算するためには「量子コンピュータ」に適したアルゴリズム開発研究が必要だという。デンソーと豊田通商は、世界初となる交通系商用アプリケーションを用いた量子コンピュータの実証実験を今月より開始すると発表した。

大規模な車両位置や走行データをリアルタイムに――。タイ国内のタクシー・トラック13万台の専用車載器から収集した位置情報を活用し、クラウド上のD-Wave Systems社製量子コンピュータで処理する。NASAやGoogleも関心を寄せるカナダ製量子コンピュータを活用した渋滞解消や、緊急車両の優先的な経路生成などの新しいアプリケーション提案につなげる。

実証にあたり、豊田通商ネクスティ エレクトロニクスタイランド社が2012年から提供している渋滞情報配信サービス「TSQUAREアプリ」のプラットフォームに、D-Wave量子コンピュータを用いた解析処理技術を共同で組み込んでいく。デンソーは解析処理アルゴリズムの実装を、豊田通商はアプリケーションの実装を担当する。実験イメージは来年1月、国際見本市CES2018で披露される。