商用車を仮想発電所にする

人々の暮らしは電気で支えられている。ガスや淡水といった資源も非常に大切だが、電気が消えるとプラントのポンプさえ停止し、水も飲めなくなる。現代において、変調を来している地球環境を改善するためにも、トータルでのエネルギー政策の実行は待ったなしである。

世界で多くの国は、低炭素社会を実現するエネルギー資源の生産および活用へのシフトを加速している。日本でもそれは同様であり、大量普及が見込まれる再生可能エネルギーを安定的かつ有効に活用する方策の一つとして、分散配置された需要家側リソースを統合制御する仮想発電所(VPP。リンクは資源エネルギー庁)構築事業が進められているという。東京電力ホールディングスと日産自動車は、きょうから来年1月末まで、電気自動車(EV)を活用したVPP実証試験を行う。

系統運用者の指令に従い、多数のEVの充放電を制御可能とすることで、EVもVPPリソースの一つになると期待されている。今回の実証試験には、日産の商用タイプEV「e-NV200」のモニターである東電HD社員30人と、「日産リーフ」オーナーである日産社員からの応募者15人の計45人が参加。試験形態は、東電HDが仮想EVアグリゲーターとしてユーザーに系統電力需要の小さい時間帯を情報提供し、指定された時間帯に充電を行ったユーザーに充電電力量に応じてインセンティブが支払われる。

参加者はスマホアプリ「EVsmart」をインストールするのみ。EVの情報監視・制御は日産のテレマティクスシステムで行う。既存システムインフラを用いて、EVを電力系統運用の調整力として活用できる点が最大の特長である。今回のしくみにおいて、一定規模のEVユーザーがどの程度の比率で充電時間のシフトを実施するかを検証することで、将来EVが大量普及した際の調整力の予測が可能となる。今後のビジネスモデルの評価に重要な指標を得ることを期待しているという。