石油資源に代わりうる、物質の大量生産に成功!

自然界の植物や微生物が生産する。多くの有機化合物は、医薬品、機能性食品素材、芳香剤、ゴムなど多岐にわたり利用されていて、近年、エネルギー資源としても注目されている。

炭素5個のイソプレンを構成単位とする天然有機化合物であり、生理活性を持つテルペノイド化合物の構造は、立体特異的であり、化学合成が困難である。微生物のゲノム(遺伝子+染色体)解析技術の進歩に伴い、放線菌や糸状菌から新しいテルペノイド化合物の生産に関わる遺伝子が発見されている。未知の遺伝子機能を解析するだけでなく、有用な生合成産物を活用するためには生産プラットフォームの開発が重要だという。

理化学研究所の国際共同研究グループは、土壌中など自然界に広く存在するグラム陽性の真正細菌であり、複雑な構造を持つ二次代謝産物を生産する「放線菌」を利用して、石油代替資源として期待される「炭化水素ボツリオコッセン」を高生産することに成功した。

主要な一次代謝経路からの前駆体生合成と二次代謝生合成を効率的に繋げることができるプロモーターを選択し、遺伝子発現制御に活用することが重要と考えた。同グループは、二次元電気泳動という手法でタンパク質を分離して、それを網羅的に突き止めるプロテオーム解析によって、培養初段の対数増殖期、そして増殖が止る定常期で発現しているタンパク質の発現プロファイルを解析した。

特徴的な発現挙動を示すタンパク質を符号化する遺伝子から、推定されるプロモーター領域をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応によるDNA増幅)法で増幅し、furaquinocin(FQ:ポリケチド-テルペノイド融合化合物)であるfur22遺伝子に連結したプラスミド(外から細胞へ遺伝子導入する際に用いるDNAの一種)を構築。そして、FQ類の生産を指標にプロモーター活性を検証した。結果、有効なプロモーターは、一次代謝生合成に関わる遺伝子を駆動するプロモーター領域を活用した場合に、二次代謝産物の生産が高いことが明らかになった。

構築したプラスミドをメバロン酸生合成遺伝子クラスターの機能を維持した株(SR2)に導入――このとき、Fur22に制御される同クラスターと同調した一括制御を可能にするため、プロモーターの下流に放線菌に適合する遺伝子配列に改変した生合成遺伝子群(ニワトリ由来ファルネシル二リン酸生合成酵素遺伝子fpps、および緑藻由来C30ボツリオコッセン合成酵素遺伝子ssl-1とssl-3)を導入し、得られた形質転換体を培養した結果、石油代替資源であるC30ボツリオコッセンを高収率(0.2 g/L)で生産できたという。

研究成果は先々月、米国の科学雑誌「ACS Synthetic Biology」(電子版)に掲載された。