10Gbps回線で最大40Gbpsの実効転送速度を実現

近年、クラウドの進展に伴い、データやサーバの管理・保守を効率化する動きが進んでいる。また、工場や現場のカメラ映像、機器のログデータなど大量のデータを分析、活用することで業務やビジネスの革新への期待が高まっている。

富士通研究所は、FPGAを搭載したサーバを活用することで、クラウド間の大量データ転送において最大毎秒40ギガビット(以下、Gbps)の転送速度を実現するWAN(Wide Area Network)高速化技術を開発した。

クラウド間のWAN回線は1Gbpsから10Gbpsへの移行が進みつつあるが、近年のIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)といったデジタル技術の発展に伴い、大量のデータがクラウド上に集まり、より高速なデータ転送が求められている。従来、転送データの圧縮や重複除去などのWAN高速化技術によって、WAN回線における実効転送速度を向上させてきたが、WAN回線が10Gbpsになると処理すべきデータ量が非常に多く、十分に実効転送速度を向上できなかった。

今回、サーバに搭載したFPGAをアクセラレータとして活用し、クラウド上での利用が可能で10Gbps以上でも実時間動作が可能なWAN高速化技術を開発。この技術では、WAN高速化処理における圧縮や重複除去のうち、負荷が重くCPUでの処理速度向上が難しい一部の処理をFPGAで実行し、CPUとFPGAアクセラレータを効率よく連携させることでWAN高速化技術の効率的に動作させる。

具体的には、データ分割や特徴量 計算、可逆圧縮処理に特化した専用演算器をFPGAに高並列に実装するとともに、各演算の完了予測に基づいた適切なタイミングでのデータ供給により演算器の高並列動作を可能とすることで、データの圧縮・重複除去処理に要する処理時間を大幅に削減できるFPGA並列化技術を開発した。

また、FPGAへの処理の切り替えを固定化し、FPGA側で重複判定前処理、圧縮処理を行い、CPU側で重複判定結果に基づいて圧縮処理結果の反映を制御する処理手順とすることで、CPU-FPGA間での入力データの再ロードおよび制御のやりとりによるオーバーヘッドを低減した。これにより、CPU-FPGA間のデータや制御の受け渡しによる待ち時間を低減し、CPUとFPGAアクセラレータの効率よい連携動作を図った。

富士通研究所では、FPGAを搭載したサーバに今回開発した技術を適用し、CPUのみの処理に対して約30倍の高速化を確認。サーバ間を10Gbps回線で接続した実験環境において大量データの転送速度を評価し、ドキュメントや画像データなどの定期的なバックアップを模擬した実験において最大40Gbpsの転送速度を確認した。これにより、WAN回線上のデータ転送効率が向上し、クラウドでのデータ共有やバックアップなどのデータ転送を高速に実施でき、様々な企業・拠点間で大量のデータを共有し活用する次世代のクラウドサービスを構築可能にする。