糖尿病の薬で皮膚の難病を発症するリスク因子を発見

この疾患は、自らの免疫が皮膚のタンパク質を攻撃してしまう難治性の自己免疫疾患であるため、発症すると患者のQOL(Quality of Life:生活の質)に大きな影響を及ぼす。

北海道大学病院の氏家英之講師らの研究グループは、DPP-4阻害薬の服用によって生じた「非炎症型水疱性類天疱瘡」患者の86%が、特定の白血球型「HLA-DQB1*03:01」というHLA遺伝子を持つことを発見した。

水疱性類天疱瘡は、皮膚に存在する「17型コラーゲン(BP180タンパク)」や「BP230タンパク」に対する自己抗体によって、全身の皮膚や粘膜に水疱(水ぶくれ)やびらん(ただれ)、紅斑(赤い発疹)が生じる厚生労働省の指定難病だ。この疾患は高齢者に生じることが多く、重症となることもある。DPP-4阻害薬の服用によって水疱性類天疱瘡が生じるリスク因子はこれまで分かっていなかった。

今回の研究では、DPP-4阻害薬の服用者に生じた水疱性類天疱瘡30例の皮膚症状や自己抗体を調べ、それらを「非炎症型」と「炎症型」に分類し、HLA遺伝子を解析した。また、DPP-4阻害薬の服用とは関係のない、通常の水疱性類天疱瘡72例とDPP-4阻害薬服用中の糖尿病患者61例のHLAも解析し、一般的な日本人873例のHLAデータと比較した。

HLAを解析したところ、非炎症型のDPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡の患者の86%がHLADQB1*03:01というHLA遺伝子を保有しており、一般的な日本人の保有率18%やDPP-4阻害薬を服用している2型糖尿病患者の保有率31%と比較して、統計的に高頻度であることを突き止めた。一方、通常の水疱性類天疱瘡では、同じHLAの保有率は26%であり、一般的な日本人と比較して統計的には差がなかった。これらのことから、HLA-DQB1*03:01は通常の水疱性類天疱瘡や、2型糖尿病とは関連せず、DPP-4阻害薬服用者の水疱性類天疱瘡の発症に密接に関連することが明らかとなった。

今回の研究結果から、HLA-DQB1*03:01 を保有する人は、保有しない人に比べてDPP-4阻害薬の服用時に水疱性類天疱瘡を発症するリスクが高いことが分かった。研究で同定したHLADQB1*03:01遺伝子は、DPP-4阻害薬服用中の水疱性類天疱瘡の発症リスクを予測する疾患バイオマーカーとして、また将来的には発症予防法の確立へ活用されることが期待される。