電気モーターと内燃機関を併用するハイブリッド車両は、運転していて楽しい。地球環境に優しい。より重要なのは二酸化炭素の排出量を低減すること、すなわち"エコ"であるとして、電気自動車のみ製造・販売を許す方針を打ち出した国があるほどだ。
エネルギーの有効利用を促進し低炭素社会の実現を目指していくには、電力の変換(直流・交流変換や電圧変換)や制御を担うパワーエレクトロニクス技術を進展させ、電力機器を飛躍的に効率化、小型軽量化、高機能化することが求められている。特に自動車産業において――。今後急速に普及していくであろうハイブリッド電気自動車(HEV)/電気自動車(EV)では、モーター制御用の1200V耐圧クラスのパワーモジュールを高効率化、小型化することが重要だという。
産総研は、自動車産業の競争力に直結するパワーモジュールについて、同研究所の先進パワーエレクトロニクス研究センター SiCパワーデバイスチームが、富士電機との共同研究でSiC(炭化ケイ素)半導体を用いた1200ボルト耐電圧クラスのトランジスタとして、独自構造のデバイスを開発し、量産レベルの試作品でその性能を実証したことをきょう発表した。
従来のパワーモジュールはシリコンデバイスのIGBTやダイオードが使われてきたが、その性能はSiの材料物性で決まる理論限界に近づきつつあり、大幅な向上を望めないという。上記研究グループは、低いオン抵抗と内蔵ダイオードの高い信頼性を両立した、ショットキーバリアダイオード内蔵のSiC縦型トレンチMOSFET――SWITCH-MOSを開発。量産試作品にて内蔵ダイオードが順方向劣化しないことを実証した。
今回開発したデバイスは、HEV/EVの電力変換システムでの使用、オールSiCパワーモジュールの高効率化・高信頼性化に貢献すると期待される。成果は米国にて4日、国際会議IEDMにおいて発表された。