エネルギ代謝制御分子、活性のしくみ解読!

糖尿病の患者数は日本国内だけでも316万超。厚生労働省による直近の調査で過去最多になったことがわかり、運動など、生活習慣の改善がいっそう強く推奨されている。いま、ある分子に研究の視線が注がれている。

細胞内のエネルギ不足により活性化し、代謝を制御する。それはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)と呼ばれる分子であり、2型糖尿病や肥満といった代謝疾患に加え、近年、ガンや老化の調節因子として注目されている。糖尿病薬のメトホルミンや運動によって活性化されることが知られていた。が、これらの薬や運動の効果がどの組織のどの細胞を標的としているのかは不明だったという。

京都大学生命科学研究科 松田教授らの研究グループは、AMPKの活性を生体内でモニタするため、AMPKのFRETバイオセンサ(蛍光共鳴エネルギ移動という現象を利用し、分子がどれくらい働いているかをモニタする手法)を発現する遺伝子改変マウスを開発。その結果、生きたマウス体内で糖尿病薬や運動によるAMPKの活性化を捉えることに成功した。

糖尿病薬メトホルミンは肝臓でAMPKを顕著に活性化させる一方で、骨格筋ではその効果はほとんどみられないことが分かった。AMPの疑似体であるAICARは骨格筋でAMPKをよく活性化させることが明らかとなり、マウスを運動させたあとに骨格筋でのAMPK活性を観察し、遅筋に比べて速筋で有意にAMPKが活性化されることが分かった。

「代謝疾患のみならずガンや老化といった研究分野でも、AMPK活性を検出するFRETマウスが画期的なツールとなる可能性がある。疾患原因となる組織・細胞の特定や、新規AMPK活性化剤が効果的に働く臓器発見につながると期待される。今後は、自由に活動するマウスのAMPK活性を捉えられるような技術を開発したい」とひとりが語った。

研究成果は米国の学術誌「Cell Reports」に掲載された。